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メディア――そこは最後のフロンティア。

ここはクイズ形式の例題を読み解いてみることで、
ネットやメディアに潜む罠について考えようというサイトです。
初めての方はぜひ「ご挨拶」を。
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例題
同じ町内に住むXさんについて、Yさんがこんなことを言っています。

「Xさんは人とケンカして怪我をさせたことがある」
「Xさんはふざけていて町の集会所のガラスを割った」
「Xさんはお酒を飲むと、とてもだらしなくなる」
「Xさんは奨学金を返していない」
「Xさんはゴミをそこらにポイ捨てする」
「Xさんは町内の回覧板をよく止めてしまう」
※これらは全て事実とします。

それを聞いたZさんはこんなことを考えます。

「ふうん、そんなに色々あるなんて、Xさんは問題のある人物なんだな」

果たして、そんな風に考えてしまってよいものでしょうか。


じつは――
Xさんは上記の一方で、人情に篤い人でした。近所の人の面倒見がよく、困った人にカンパしてあげたり、道行くお年寄りの荷物を持ってあげたりもしているようです。また川で溺れかけた子どもを救ってあげたこともありました。

Yさんは日ごろからXさんをよく思っていなかったので、彼に対する悪いイメージを広めたかったのです。


解説
Yさんが、Xさんの悪口しか言っていないということに気付いたでしょうか。基本的にはいい人であっても、全くすねに傷のない人はそういないはずです。性格的欠点もあるでしょう。

Yさんがしたことは、言うならば悪口のコレクションです。

相手のいいところには全く触れず、悪いところだけをリストアップする。こうすることで、一切嘘をつかずに相手の悪い印象だけを広めることが出来ます。

さらには「ケンカして怪我をさせた」というそれなりに重大な過失と「回覧板をよく止めてしまう」レベルの些細なことを一緒に言い及んでいることも見逃せません。ただ回覧板をよく止めるだけならありがちな話です。が、ケンカの事実や他の問題点と纏めてそれを聞くと、「人に怪我をさせるような人だから、そういうことでもだらしがない」などと受け取ってしまいます。

悪口をコレクションすると、それらの悪口が相乗効果をもたらして余計に悪い印象を与えます。些細な欠点までもがその相手の人格を悪く考える方に働いてしまうのです。「映画スターは脱税している? ~振り込め詐欺編」確証バイアスという心理学用語について触れましたが、悪口のコレクションもまたこの確証バイアスを巧みに利用していると言えます。

ところで例題の場合においてYさんは、自分のやっているXさん非難が「社会にとってよい行いである」と確信している可能性もあります。Xさんは悪人なのだから、彼を懲らしめるためなら何をしても構わないと考えているわけです。自分は善人だと思っている人でも、こうした悪口コレクションをやってしまうものなのです。


ちょっと待った!
例題では「じつはXさんはいいところも多い人」だとしましたが、傍から見ると「本当にXさんがただただ悪い人で、Yさんは特に悪意で悪口コレクションを行っていたのではない」という可能性もないわけではありません。

ですが、Yさんが意図的にこの悪口コレクションを行っていたのだとしても、自分からそれを認めることはないはずです。あくまで「Xさんは本当に悪いところだけの人なんだ」と言い張るでしょう。Yさんが意図的に悪口コレクションをしているのかどうかの判断は、Yさんの言葉だけでは確認のしようがないのです。

なお、もちろんですが、人とケンカしたり酒癖が悪かったりしてもよいと言っているわけではありません。


筆者の見解
ヘイト・スピーチやネガティヴ・キャンペーンという言葉を聞いたことがないでしょうか。ネットを眺めていて、一件正当な批判のようだが、そのじつやたらと相手の悪いところだけを強調しているのを一度くらいは見掛けたことがあると思います。いや何もネットに限らず、新聞、書店売りの書籍や漫画雑誌でもそういうことは可能です。

「“好色”をことさら強調!」では誰にでも当て嵌まるレベルの欠点をその人の固有の問題であるかのように言う論法を紹介しましたが、これと今回の「悪口コレクション」と組み合わせるだけでも、簡単にヘイト・スピーチが可能です。

「事実を述べているのだから問題がない」と反論する人もいるでしょうが、それは違うのではないでしょうか。ある人物についてその悪い点だけを並べ立てることで、その人物への単なる人格攻撃になってしまう。そこが問題なのです。

そもそもある問題点についての正当な批判なら、その問題のみに論点を絞るべきです(例題なら酒癖が悪いなど)。逆にその人物の全体像についての議論ならば、いい点も悪い点も公平に並べるべきでしょう。

なのにその人物の悪いところだけをいくつも論うのは、その論う側(この例の場合はYさん)にXさんに対する何らかの負の感情があるから、とは考えられないでしょうか。

これは人物に限らず、政党や民族、企業などの集団でも同じことです。あるいは商品や催事、何でも当て嵌まります。

なおヘイト・スピーチを法規制しようという流れもあるようですが、うっかりすると本当に必要な批判まで規制してしまいかねないため、簡単ではないようです。規制議論はさておき、少なくとも悪口だけをコレクションする言い回しを聞いても真に受けないよう、日ごろから注意した方がよさそうです。

※ヘイト・スピーチの方法としてはこの他に「解釈次第ではどうとでも取れることを悪く言う」方法があります。これについては後日。


演習
あなたの性格について、いい点と悪い点をそれぞれ5つ以上挙げてください(無理にでも)。




※その後、こちらを。 
ではいい点は伏せて、悪い点だけを考えてみてください。誰かがその悪い点“だけ”を人に言いふらしたとして、あなたはそれを正当な批判だと黙認出来るでしょうか。
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例題
3年3組で学級新聞の企画としてこんなアンケートが行われました。

「この学校で一番嫌いなクラスは何年何組ですか」

集計したところ、

1位:3年4組
2位:3年2組
3位:5年1組
4位:6年2組
5位:2年5組

でした。他のクラスとのトラブルの件数についても集計したところ、ほぼ同じ順位となりました。これを知った3年4組の○○君は思います。

「僕は3組のことを悪く思っていなかったのに、あいつらは僕達のことをそんな風に思っていたのか」

その考え方、何か問題はないのでしょうか――


じつは――
5年1組というのは、以前に3年3組と合同でレクリエーションをしたクラスでした。

6年2組は担任の先生が学校で一番怖い人。

2年5組は教室が3年3組のすぐ真下にあり、共用する階段の辺りでよく生徒が遊んでいてトラブルになり易かったのです。


解説
普通に考えれば同じ学年の、特に教室の近い隣りのクラスとは生徒同士の交流は多いはず。交流が多ければ少なからずトラブルの件数も多くなります。必然的に嫌いなクラスとして挙げられ易いのです。夫婦喧嘩も、ご近所の揉め事も、取引先とのトラブルも、相手が連れ合いだから、ご近所同士だから、もしくは取引先だからこそ起こるのです。

また同じ小学校だからといって、3年の生徒が学年の違う1年や6年のクラスについて、どれだけ詳しく知っているのでしょうか。知らないクラスはそもそも嫌いになりようがありません。知らないもの、無関係のものはそもそも評価の対象から外れます。じつは6年4組には悪い生徒が多くて、隣りの6年5組はいつも迷惑を受けているかも知れない。でも教室の離れた3年3組の生徒が一々そんなことを知ってはいないわけです。これに関してはこちらで同様のケースを紹介しました。

もちろん3年3組の生徒の中で、上位にランクインしたクラスに仲のよい友達がいる子もいたでしょう。しかし今回、質問の内容がそもそも「嫌いなクラスは何年何組ですか」だったことも見逃せません。強いて嫌いなものをあげろと言われたらなおのこと、よく知っているお隣りのクラスにとりあえず投票することになります。この強いて嫌いなものを挙げるという質問形式もまた、誤解や錯覚を生む原因となります

なのに、例に挙げたようなアンケートの結果をうっかり「隣りのクラスは自分達を特別に嫌っている」などと誤解してしまうのです。


ちょっと待った!
なお一応、本当に4組の誰かが3組の何人かに迷惑を掛けていたために、このような結果になったことも考えられますが、それならそれで4組の側が悪いわけです。


筆者の見解
人間、何か自分が揉め事の当事者になった時、相手が特に悪い人のように感じてしまいます。しかし得てして、「付き合いのあるお隣りさんとは多少なりともトラブルも起こる」レベルではないでしょうか。

別の見方をすれば、いい影響も悪い影響も受けるのがお隣りさんだとも考えられます。なのに悪い影響の部分だけをことさら取り上げるのは危険な考え方のように思えます。

なお、今回の例題はよくある錯覚として紹介しましたが、その気になれば煽動の材料にもなってしまいます。

例えば3年4組の××君が3年3組の△△君に個人的に嫌がらせを受けたことがあったとしましょう。××君は3組でのアンケートの結果を知って、腹いせに3組と4組とをケンカさせようと目論むかも知れません。恐らく××君はクラスの仲間に言いふらすでしょう。

「あいつら3組は俺達4組のことをそんな風に思ってるんだぜ。本当に嫌な連中だぜ」

あなたもネット上、あるいは雑誌などで上記のような発言を目にしたことがなかったでしょうか?

さらには××君は4組でもわざわざ同じアンケートを取るかも知れません。当然3組が上位に来ることは言うまでもないでしょう。アンケートというものを悪用すると、容易に敵対感情を煽れることにぜひ注意してください。


演習

今回紹介した他に、「隣りの○○」に当て嵌まるものを3つ挙げてください。

※解答例は割愛。

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