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メディア――そこは最後のフロンティア。

ここはクイズ形式の例題を読み解いてみることで、
ネットやメディアに潜む罠について考えようというサイトです。
初めての方はぜひ「ご挨拶」を。
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例題
『星空のコンチェルト』というテレビ・アニメがヒットしています。Bさんという大学生はそのアニメのタイトルくらいしか知らなかったのでネットで検索したところ、たまたまあるブログを目にしました。そのブログには2つのカテゴリがあり、1つは『星コン』の賞賛記事を、もう1つは○○党に対するヘイト・スピーチ的な記事を取り扱っていました。

Bさんは

「このブログの主は○○党のアンチなのか。きっと『星コン』というアニメが好きな人間にはろくなやつがいないんだな」

と思ってしまい、その後、ネット掲示板などで『星コン』の話題を見ると「そのアニメを観ているやつは○○党のアンチ。ろくな人間はいない」と喧伝するようになりました。ところがそれが裏目に出ます。Bさんの書き込みを読んだ『星コン』のファンの少なくない人数が、「ああ、またあの○○党の支持者か」と、○○党を応援する人間を鬱陶しいと思うようになってしまいました。

Bさん、何か大きな勘違いをしてしまったようですが…。


じつは――
『星コン』のファンの多さに目を付けて利用することを企んだ、○○党のアンチによる効果的な煽動でした。


解説
Bさんは本来なら敵対する必要のない『星コン』のファンを多数、わざわざ○○党の敵に回してしまいました。まさしく虎の尻尾を踏まされてしまったわけです。

相手の敵を増やす、という意味ではむしろ「赤シャツの罠」に近い事例と言えるでしょう。しかし友人同士を仲違いさせるような規模の小さなものではなく、○○党の支持者と大ヒットしたアニメの多数のファンを敵対させるというかなり影響範囲の広いものです。これは煽動の舞台がネット・ショップというマス媒体だからです。


ちょっと待った!
もちろん、現実に似たようなケースに遭遇したとしても、それが意図的な煽動なのか、偶然なのかを判別するのはとても困難です。また仮に意図的な煽動だったとしても、これほどうまく大きな範囲に影響を与えるかどうかも不確実です。

しかし事の真相がどうであろうと、Bさんの立場からすれば、彼が拙速な判断を下してしまったことは間違いありません。


筆者の見解
Bさんのように拙速に物事を決め付ける態度でいると、それだけ“見えざる悪意”に翻弄されることになります。シーソー効果で触れた善悪二元論的な価値観の持ち主は、こうした罠に嵌ってしまう傾向にあるのではないでしょうか。


演習
今回の例題を踏まえた上で、「『この商品を買った人は~』の錯覚」の例題を読んでください(既に読まれた方ももう一度)。何か気付いたことはありませんか?




※解答例はこちら。
・「この商品を買った人の50%がDVD『星空のコンチェルト』を購入しています」というネット・ショップの表示を、もしBさんのような○○党の支持者が見たとしたらどうでしょう。やはり「『星コン』のファンは○○党のアンチ」と思い込んでしまう可能性があるのではないでしょうか。

・『星コン』と『○○党の暗部』を買ったその“2人”は、じつは煽動が目的でそれらを購入しているということもあり得ます。しかも2人と思わせておいて、じつは同一人物のマルチ・アカウントかも知れません。

とは言え、現実に似たようなケースがあったとして、いずれもはっきりした証拠を掴みようもないわけで、「そういう可能性もあるので注意しましょう」という結論になってしまいます。が、Bさんのように拙速な思い込みをしないためにも、用心に越したことはありません。
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例題
○○さんと言う若い教師が、とある地方の学校に赴任して来ました。彼は堀田氏という同僚と仲良くなります。が、教頭先生が酒の席で○○さんに言います。

「けして悪いようにはしないから私の話を聞きなさい。きちんとした証拠がないから名前は出さないが、君の前任者が、そいつにうまいことやられてしまったんだよ。君は人生経験が浅いので注意したまえ」

○○さんはちょうどその直前、同じ酒の席で同僚の吉川という人が

「堀田が…」「煽動して…」

と言っているのを耳にし、「堀田が生徒を煽動して俺をいじめようとしているのだろうか」と思っていたところでした。

○○さんも教頭や吉川氏のことを胡散臭い人間だとは思っていたのですが、それでも潔癖な性格のためか

「もしかしたら本当に、堀田は裏表のある人間かも知れない」

と思ってしまい、その後しばらく堀田氏と仲違いするようになってしまいました。


じつは――
言うまでもありませんが、この例題は日本近代文学の祖、夏目漱石の『坊ちゃん』からの引用です。堀田氏は山嵐、教頭は赤シャツ、吉川氏は野だいこだと言えば「ああ、そう言えば」と思う人も多いでしょう。

赤シャツは自分にとって目障りな存在である山嵐を追い落とすため、彼の味方につきそうな坊ちゃんに働きかけて2人を仲違いさせようとしたのです。


解説
この例題、じつに多くの問題が示唆されています。

1・仲間内(もしくは仲間になりそうな人間)の悪口を他の面々に吹き込み、仲違いさせる。
2・虚偽や証拠がない風説を、うまくほのめかすことで相手に事実だと思わせようとする。
3・情報源や情報そのものが怪しげだとは分かっていても、案外その情報に考えを左右されてしまう。
4・「親切で教えてやっている」という、恩着せ型の嘘。
5・「君は知らないのだろうけど」などと言って、聞き手に自分が無知であり、話者が聞き手の知らないことを知っているのだと思わせる話法。
6・本当は自分が扇動者なのに、相手の側が扇動者であると思わせる煽動。
7・善悪に潔癖な人間ほど、疑心暗鬼に陥り易い。

2~7についても重要なのですが、それぞれ十分にボリュームがありそうなので、今回は1に絞って話を進めます。

平たく言えば、仲違いを起こさせるのは煽動の基本だということです。

職場、政治活動、市民運動…。ある程度同じ考え方を共有している(もしくは利害が一致する)人間は、グループを結成して団体で行動するものです。多数派であることは、それだけで社会に強く働き掛ける力を持っているということです。

ということは。それらのグループ活動に対抗するには真っ向から対立するよりも、内部分裂を起こしてグループを解体させる(またはそもそも結成させない)ように仕向ける方が得策だと言えます。

グループ活動とまでは行かなくとも、自分の利益や嫌がらせが目的で仲間同士の友情にひびを入れようする人間もいるかも知れません。うまく騙されないようにしましょう。くどいようですが、悪口を聞いてもすぐに信じないことです。


ちょっと待った!
『坊ちゃん』の赤シャツの罠は、誰の目にも罠であることが伺えます。しかし現実には、罠なのかそうでないのか判別し辛いケースの方が多いかも知れません。坊ちゃんのように後先考えないで無鉄砲な行動を起こしたりせず、きちんとした裏付けを取ってケース・バイ・ケースで対応しましょう。

また、正々堂々と「相手のグループの中で考え方が違う人間がいるのはどうしたことだ」と疑問を呈するのは、今回問題にしたような間違った行為ではありません。赤シャツのケースは手段を問わず、嘘をついてまで仲違いさせたことが問題です。


筆者の見解
『坊ちゃん』の書評を見ると、大抵は「明治文学の草分け」「社会の矛盾に義憤を感じる純情な青年を主人公にした青春小説」などということが書かれています。

しかし筆者としては、この小説の中の「ずる賢い人間が具体的にどのような手段に及ぶのか」や「実社会で起こり得る、誰もが被害者になる可能性のある情報操作」についての描写に、もう少し注目が集まってもいいのではないかと思います。

ところで奇しくも本編中、当の赤シャツの口からこんな言葉が出ています。

「悪いことをしないのが一番だが、自分が悪いことをしなくても、相手が悪いのが分からないとやはり酷い目に遭う」

赤シャツは嘘吐きですが、この言葉については真実を含んでいる気がしてなりません。漱石自身の考えが出ているとも思えますが、いかがでしょうか。


演習
あなた自身の人生を振り返ってみて、

a・仲のよかった友達や、逆にあまり親しくない人が、急にあなたに悪意を持つようになった。
b・仲のよかった友達や、逆にあまり親しくない人の悪口を聞いて、真に受けてしまった。

ことはありませんでしたか。



※その後、こちらを。
じつはその時、あなたの周囲に赤シャツに当たる人物はいませんでしたか? 
aのケースならあなたが山嵐、bならあなたが坊ちゃんです。
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