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メディア――そこは最後のフロンティア。

ここはクイズ形式の例題を読み解いてみることで、
ネットやメディアに潜む罠について考えようというサイトです。
初めての方はぜひ「ご挨拶」を。
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例題
A君がB君を殴ったそうです。そのことについて先生が問い質したところ、C君は言いました。

C君「でもBはAに対して嫌がらせをするんだぜ。商店街の大人にAは暴力的な奴だと言いふらしてるんだ」

先生は、じつはB君の側にも問題があるのだろうかと疑問に思ったようですが…。


じつは――
 「先にB君がA君の悪口を言ったから、A君がB君を殴った」のではなく、「先にA君がB君を殴ったので、そのことをB君が商店街の大人に話した」のです。
 
C君はどちらかと言うとA君寄りの人間でした。


解説
格闘漫画の『キン肉マン』に、技を仕掛けた相手と仕掛けられた相手が逆転する「順逆自在の術」というのが出て来ますが、この例題の場合は出来事の因果関係を逆転させてしまっています。

C君はなかなか口が立つようです。先にどちらが原因を作ったかという点についてはぼかして話しています。これでは先生がうっかり順序を逆に受け止めても仕方ありません。
 
先に悪いことをしたほうが、ある程度のペナルティを受けたり批判に晒されたりするのは社会的に見て妥当です。しかしC君は事の経緯を逆転させて、まるでB君の側に原因があるかのように言うわけです。味方の罪をごまかした上、相手の側へ責任転嫁してしまう、かなり悪質な詭弁であると言えます。


ちょっと待った!
もちろんB君が行き過ぎてA君を殴り返したり、A君の持ち物を壊したりしたのなら、「シーソー効果」で説明したようにA君とB君それぞれ別個に罪を働いたことになります(どちらも悪い)。
 
しかし何の脈絡もなくB君がA君について「暴力的だ」と言ったのならB君にも問題がありますが、例題ではB君が先に殴られた上でそのことについてA君を「暴力的だ」と言ったわけです。これはさすがに悪口ではなく、許容される範囲内の批判だと考えられます。因果関係が逆転したことで、その“許容される範囲”がずれてしまっていることがポイントです。

なお、例題ではC君はA君贔屓で、先にA君がB君を殴ったとしましたが、確認してみたらC君の言い分が正しかった、ということもあり得ます。その辺は細かく事情を調査するしかありません。


筆者の見解
C君がさらに「いや、だからと言ってB君の言ったことは度を越している。ただの悪口だ」などと言って、あくまで話題をB君の行為の是非に持っていこうとすることも考えられます。これも相当悪質な行為です。
 
「どちらがそもそも悪いのか」「A君が先に殴った」ということと、「B君が商店街の大人に言ったことが悪口に当たるかどうか」はもはや別の問題です。本来先生はA君の行為の是非について問い質したわけで、C君がそれをB君の側の是非に持っていくのは論旨の摩り替えです。これについてはまた後日。
 
なお、今回の例題はそもそも「どちらが先」「原因は何」という重要な情報が不足しているという点で、「カーデシアの誤謬」とも関連しています。情報不足は誤解の元になったり、詭弁の付け入る隙を生んだりします。
 
殺人事件の容疑者逮捕のような緊急性を要するものならともかく、まずは先に十分な情報を集めること。結論はそれから出すように心掛けましょう。先に誰かの出した結論を真に受けてしまうと、その後の情報集めさえ確証バイアスによって客観性が損なわれてしまいかねません。

もっとも、A君が先に殴った事実が明らかな場合でも、話を強引にB君の発言の方へ逸らそうとする人間も中にはいるでしょう。きちんとした審判や進行役のいないネット上での論争は、こうした強弁が罷り通ってしまうことが多いのではないでしょうか。


演習
次の2組の文章について、それらを繋げて1つの文章にしてみてください。その後、因果関係を逆転させてもう1つ文章を作ってください。

1a・「X君はクラブの中で仲間外れにされている」
1b・「クラブの顧問の先生がX君ばかり庇っている」

2a・「○○国が××国との国境に兵を配した」
2b・「××国が○○国との国境に兵を配した」




※回答例はこちら。 
 1・「X君がクラブの中で仲間外れにされているので、顧問の先生はX君ばかり庇っている」
「顧問の先生がX君ばかり庇っているので、X君はクラブの中で仲間外れにされている」
2・「○○国が××国との国境に兵を配したので、××国も国境に兵を配した」
「××国が○○国との国境に兵を配したので、○○国も国境に兵を配した」
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例題
タケシ君「○○高校は創立100周年らしいけれど、今までスポーツでは大した成績を残してないんだぜ」
カオル君「そんなことはないよ。20年前に、野球部が甲子園に出場したらしいよ」
タケシ君「でも、それは20年も前の話だろう?」

……日常的にありがちなやり取りですが、よくよく考えるとおかしいのですよ。


ここがおかしい――
たった3行の会話ですが、話が途中で摩り替わっていることに気付きましたか?

会話が始まった時点では「創立して100年も経つのにスポーツでは成績を残していない」という○○高校の過去のスポーツでの実績の有無についての話題だったはずです。それなら例え20年前だろうが、甲子園に出場したのは事実です。

ところが何故か、会話の後半では「甲子園に出場したと言うが、それは20年も前のことで今は凄くない」と野球部の現時点での実力についての別の話題に摩り替わっています。


解説
相手があくまで自説への反例として持ち出した事例なのに、あたかも相手の側がその事例をもとに何か別のことを言い出したかのように話を摩り替え、それに反撃する論法です。

もしこれが

カオル君「○○高校の野球部って凄いんだよ。甲子園に出場したらしいよ」
タケシ君「でも、それは20年も前の話だろう?」

と、カオル君の方から野球部の現時点での実力についての話題を切り出して、そこへタケシ君が20年も昔のことだから大したことはないと反論したのなら、特におかしくはありません。

でももう一度例題を読み返してみてください。最初に話を切り出したのはタケシ君の方で、その内容は○○高校の過去のスポーツでの実績の有無についてです。

タケシ君「○○高校は創立100周年らしいけれど、今までスポーツでは大した成績を残してないんだぜ」
カオル君「そんなことはないよ。20年前に、野球部が甲子園に出場したらしいよ」

カオル君がきちんと反例を挙げて反論したわけですから、タケシ君の説はその時点で既に論破され、この話題は終了していることになります。

別にカオル君の方から「20年前に甲子園に…」などと言って野球部の現時点での実力について甲子園級だなどと主張したわけではありません。ところがタケシ君はまるでカオル君の方からそういう話題を持ち出したかのように、「20年も前のことじゃないか」と反論しました。

論旨を摩り替えた上でそれに対して反論しているので、話の後半だけを聞くとあたかもタケシ君がカオル君を論破しているように見えてしまうのです。

さて、ここで注意して欲しいのが「20年前だけど、野球部が甲子園に出場したらしいよ」という言葉が、どういう話の流れで切り出されたかという点です。いきなりカオル君の方からこう言い出したのなら、カオル君は言外に「甲子園に出場するくらいだから、○○高校の野球部は凄いんだぜ」と主張していることになります。

しかしあくまで例題の場合、カオル君はあくまでタケシ君の話の反例として「20年前だけど、野球部が甲子園に出場したらしいよ」と言ったに過ぎません。つまり上記のようなニュアンスは含まれていないのです。


ちょっと待った!
これが例えば

タケシ君「○○高校は創立100周年らしいけれど、今までスポーツでは大した成績を残してないんだぜ」
カオル君「そんなことはないよ。20年前に、野球部が甲子園に出場したらしいよ」
タケシ君「いや待て、それは同じ○○高校でも、別の県にある兄弟校の方じゃないか?」

という反論であれば、当初の「○○高校は今までスポーツでは大した成績を残していない」という主題からまだ話が繫がっていますので、今回のケースには当たりません。


筆者の見解
自分の言ったことに対して相手に鋭い反論を受けて、悔し紛れで再反論しようとすると、この例題のタケシ君のような論法を繰り出してしまいがちです。

もしかするとタケシ君は、普段から○○高校のことを快く思っていなかったのかも知れません。○○高校を悪く言うつもりが、あっさりと反論されてしまった。とにかく何か言い返そうとして、話題を摩り替えてしまったわけです。

今回の例、日常の会話でもありがちなやり取りではないでしょうか。家族や友達相手の雑談なら、途中で話題が変わっても大した問題ではありません。

しかしネットの掲示板やテレビの討論番組、さらにはきちんとした議論の場などにおいて、こうした間違った論法を振りかざす人がいないとは限りません。そもそも今何の話をしているのか、どちらの側がその話を切り出したのか、常に注意して聞いた方がよさそうです。

筆者はこうした論法を切り出す背景に、「とにかく自分が相手を言い負かすことが第一」という考えが見え隠れしている気がします。しかし本来討論というのは、意見を交換することでより正しいであろう考えを模索することが目的のはずです。


演習
以下の会話を読んで、元の話題と、摩り替わった後の話題が何であるか考えてみてください。

みよちゃん「×本×也君のシングルCDが、7週でミリオン・セラーになったんだって。凄い!」
よっちゃん「□崎□彦の曲は、5週でミリオン行ったらしいよ?」
みよちゃん「でも□崎□彦って、ミリオンに行ったのその曲だけじゃない」




※解答例はこちら。
「×本×也のシングルCDが、たった7週でミリオン・セラーになったことが凄い」
→「5週でミリオンに達したから□崎□彦は凄いと言うが、ミリオン・セラーはその1曲だけだ」

ただし、よっちゃんが□崎□彦のファンで、「□崎□彦の方が×本×也より凄い」と主張するためにこのように言ったのなら、みよちゃんの再反論はありです。
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