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メディア――そこは最後のフロンティア。

ここはクイズ形式の例題を読み解いてみることで、
ネットやメディアに潜む罠について考えようというサイトです。
初めての方はぜひ「ご挨拶」を。
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例題
Aさんがネットでこんな記述を見掛けました。

「アクション映画スターの脱税が発覚」

続きを読むと、そのアクション映画スターは○野○男とのことです。検索したところ、十分信頼出来るニュース・サイトにおいて確かに「アクション映画スターである○野○男が脱税をしていた」という記事を見つけました。特にアクション映画に興味を持っていないAさんでしたが、何となく「アクション映画なんてろくなもんじゃないな」と思い込んでしまいました。


じつは――
既に紹介済みの∃と∀の混同を読み直してください。あくまでこの事件は

a・「(○野○男という)あるアクション映画スターが脱税していた」

に過ぎません。

b・「全てのアクション映画スターが脱税していた」

わけではないはずです。

じつはその記述を書いた人間は大のアクション映画嫌いでした。たまたま脱税で検挙された○野○男がアクション映画スターであること知り、アクション映画の悪い印象を広めるためにそのような書き込みをしたのです。


解説
「ある集合に属する一部の人間が何らかの悪いことをしていた」という事実を用いて、意図的にその集合全員のイメージ低下に用いることが出来ます。

まず言うまでもなく、「あるアクション映画スター」と「全てのアクション映画スター」を混同している点が問題です。もっと言ってしまえばこの場合、そもそも「○野○男」個人に帰すべき問題で、彼がアクション映画スターであることはただの付加情報でしかありません。

が、しかし。

1・「○野○男の脱税が発覚」
2・「アクション映画スター○野○男の脱税が発覚」
3・「アクション映画スターの脱税が発覚」

この3つは、いずれも間違ったことは書いていませんが、1より2、2より3の方がよりアクション映画に対してネガティヴな印象を与えます。

アクション映画に興味がないAさんが3を読んだ場合、「ふーん、アクション映画ってよく知らないけど、そんな悪い奴がいるんだ」とb・「全てのアクション映画スターが脱税していた」に近い印象を受けかねません。


ちょっと待った!
現実においては、「アクション映画スターの脱税が発覚」という記述を目にしたからと言って、それが本当に「悪意による情報操作なのか」それとも「悪意のない人間がたまたまそういう書き方をしてしまっただけ」なのか、全く区別出来ません。

今回のお話は、あくまで「そういう記述は情報操作である可能性があるから、注意しましょう」もしくは「あなた自身がそういう紛らわしい書き方をしないようにしましょう」という趣旨です。「そういう記述の全てが情報操作である」と言っているのではありません。


筆者の見解
今回は特定の職業を例題として挙げましたが、それこそ政党や国家、民族、企業などについても、この手の情報操作を行うことは簡単に出来ます。なぜなら対象となる集合が大人数であればあるほど、その中に悪いことをする人が含まれている可能性が高くなるからです。万単位、億単位もの人がいる集団について、1人だけ悪人がいることをあげつらって残りの人間全体を悪く言うわけですから、じつにお手軽です。

実社会において実際にこうした発言を耳にすることがあったなら、その発言を真に受けてよいのかどうかはその人物の普段の発言や行動で判断することになります。例えば常日頃から対象となる集合を嫌っていることが明らかな人や問題発言ばかり繰り返している人の発言なら、割り引いて考えることになります。

しかしネットのブログや掲示板で、会ったこともない書き手の人格や日ごろの言動まで判断するのは非常に困難です。その点がネットの匿名性の強さの1つ問題点だと言えます。

なお、情報の受け止め方を検討する一つの方法として、「別の集合の例と比較してみる」手があります。例題のケースなら、「演歌歌手や漫画家にだって、脱税したことのある人間はいるのでは?」などと自問自答してみることです。そうすれば「アクション映画スターが脱税」という事実がそれほど大した意味は持っていないことに気付くでしょう。


演習
下記のような事実があったとして、事実を曲げないで受け手に異なる印象を与える文章が書けるか考えてみてください。

「○○県出身のアクション映画スターで、鉄道オタクとしても知られる△山△彦が女性問題を起こした」




※解答例はこちら。
・「○○県出身のスターが女性問題を起こした」
・「アクション映画スターが女性問題を起こした」
・「鉄道オタクが女性問題を起こした」
・「△山△彦が女性問題を起こした」

…組み合わせも考えれば、もっと書けますね。いずれも虚偽ではありませんが、受け手に異なった印象を与える可能性があります。

もし○○県が嫌いな人ならその部分だけを強調するでしょうし、自分が鉄道オタクの人は逆にその点を伏せるかも知れません。

しかし△山△彦が女性問題を起こしたその原因が○○県出身だからか、アクション映画スターだからか、鉄道オタクだからか、一体誰がどうやって結論付けるのでしょう?
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例題
とてもシンプルな例題です。真偽について考察してください。

「古代ローマ人は、人殺しをした」
→「セネカは古代ローマ人である(ここまでは事実とする)」
→「なので、古代ローマ人であるセネカもまた人殺しである」


――果たして、是か非か?


じつは――
上記の例題は意地悪問題です。なぜなら1つ目の文章が2つの意味に取れるからです。

a・「少なくとも1人以上の古代ローマ人は、人殺しをした」
b・「全ての古代ローマ人は、人殺しをした」

もしbが真であればセネカも人殺しですが、aのみが真であればそうではありません。



解説
「少なくとも1人以上の○○が~であること」と、「全ての○○が~であること」は厳密に区別しなくてはいけません。

数学(論理学)の世界では両者を「∃」と「∀」という記号で区別します。わざわざ記号があるくらいですから、それだけこの区別が重要だということは察しがつきます。

a・「∃古代ローマ人は、人殺しをした」
b・「∀古代ローマ人は、人殺しをした」

これまた数学用語で「集合」という言葉がありますが、「ローマ人」という「集合」の中に「セネカ」が「要素」として含まれていることになります。

もしbが真であれば、

e_and_a1.png










「殺人者」という大きな集合の中に「ローマ人」という集合全体が含まれるわけですから、「セネカ」も「殺人者」に含まれます。

一方、もしaのみが真であれば、

e_and_a2.png










「ローマ人」と「殺人者」という別々の集合があり、なおかつ両方に属する「積集合」があるということだけが言えます。「ローマ人でなおかつ殺人者」という「積集合」の中に「セネカ」が含まれているかどうかは分かりません。

しかし、うっかりしていると「∃と∀を混同」してしまって、bでなくaのみが真であるのに「セネカも殺人者である」かのように錯覚してしまったり、酷い場合には「古代ローマ人全員が殺人者である」と極論してしまったりすることになります。


ちょっと待った!
例えばこういう例。

・○月×日の△△行きツアーに参加した10人のうち、1人は田中さんだった。
・参加者10人のうち9人が食中毒になったが、1人は食中毒にならなかった。

について、

1・「全ての参加者が食中毒になったわけではない」
→「なので、現時点では田中さんが食中毒になったとは限らない」

と言うことは可能です(これが今回のテーマ)。しかし、

2・「全ての参加者が食中毒になったわけではない」
→「なのでこのツアーと食中毒は関係ない」

とは言えません(今回のテーマの対象外)。∃と∀を厳密に区別して考えることは、入手した情報の持つ意味そのものを正しく理解するために必要です。しかし、その事実から何が類推出来るかとなると、別問題です。


筆者の見解
それでも「∃と∀の混同」は避けるべきです。そもそも与えられた情報の意味を間違って解釈してしまってはどうしようもないからです。

途中の理屈がどれだけ正しくても、推論の土台となる情報についてその意味を間違って解釈しているのでは正しい結論が得られるはずもありません。

また、「∃と∀の混同」は意図的に煽動に用いることが出来るため、その点でも警戒した方がよいです。詳細はこちら


演習
「少なくとも1人の○○は~である」
「全ての○○は~である」

○○と~に自由に単語を当て嵌め、少なくとも3つ文章を作ってください。




※その後、こちらを。
では次に、ではその3つの文章の○○と~を

「少なくとも1人の○○は~であるからと言って、全ての○○は~であるとは言えない」

という文に当て嵌めてみてください。
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