忍者ブログ
――あなたの情報力を試すサイト。
プロフィール
HN:
yoh
性別:
非公開
職業:
ソフトウェア開発業
趣味:
テニス、美術鑑賞、ひとり旅、オタク系全般
自己紹介:
しがない自営業のプログラマです。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
メディア――そこは最後のフロンティア。

ここはクイズ形式の例題を読み解いてみることで、
ネットやメディアに潜む罠について考えようというサイトです。
初めての方はぜひ「ご挨拶」を。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

例題
同じ町内に住むXさんについて、Yさんがこんなことを言っています。

「Xさんは人とケンカして怪我をさせたことがある」
「Xさんはふざけていて町の集会所のガラスを割った」
「Xさんはお酒を飲むと、とてもだらしなくなる」
「Xさんは奨学金を返していない」
「Xさんはゴミをそこらにポイ捨てする」
「Xさんは町内の回覧板をよく止めてしまう」
※これらは全て事実とします。

それを聞いたZさんはこんなことを考えます。

「ふうん、そんなに色々あるなんて、Xさんは問題のある人物なんだな」

果たして、そんな風に考えてしまってよいものでしょうか。


じつは――
Xさんは上記の一方で、人情に篤い人でした。近所の人の面倒見がよく、困った人にカンパしてあげたり、道行くお年寄りの荷物を持ってあげたりもしているようです。また川で溺れかけた子どもを救ってあげたこともありました。

Yさんは日ごろからXさんをよく思っていなかったので、彼に対する悪いイメージを広めたかったのです。


解説
Yさんが、Xさんの悪口しか言っていないということに気付いたでしょうか。基本的にはいい人であっても、全くすねに傷のない人はそういないはずです。性格的欠点もあるでしょう。

Yさんがしたことは、言うならば悪口のコレクションです。

相手のいいところには全く触れず、悪いところだけをリストアップする。こうすることで、一切嘘をつかずに相手の悪い印象だけを広めることが出来ます。

さらには「ケンカして怪我をさせた」というそれなりに重大な過失と「回覧板をよく止めてしまう」レベルの些細なことを一緒に言い及んでいることも見逃せません。ただ回覧板をよく止めるだけならありがちな話です。が、ケンカの事実や他の問題点と纏めてそれを聞くと、「人に怪我をさせるような人だから、そういうことでもだらしがない」などと受け取ってしまいます。

悪口をコレクションすると、それらの悪口が相乗効果をもたらして余計に悪い印象を与えます。些細な欠点までもがその相手の人格を悪く考える方に働いてしまうのです。「映画スターは脱税している? ~振り込め詐欺編」確証バイアスという心理学用語について触れましたが、悪口のコレクションもまたこの確証バイアスを巧みに利用していると言えます。

ところで例題の場合においてYさんは、自分のやっているXさん非難が「社会にとってよい行いである」と確信している可能性もあります。Xさんは悪人なのだから、彼を懲らしめるためなら何をしても構わないと考えているわけです。自分は善人だと思っている人でも、こうした悪口コレクションをやってしまうものなのです。


ちょっと待った!
例題では「じつはXさんはいいところも多い人」だとしましたが、傍から見ると「本当にXさんがただただ悪い人で、Yさんは特に悪意で悪口コレクションを行っていたのではない」という可能性もないわけではありません。

ですが、Yさんが意図的にこの悪口コレクションを行っていたのだとしても、自分からそれを認めることはないはずです。あくまで「Xさんは本当に悪いところだけの人なんだ」と言い張るでしょう。Yさんが意図的に悪口コレクションをしているのかどうかの判断は、Yさんの言葉だけでは確認のしようがないのです。

なお、もちろんですが、人とケンカしたり酒癖が悪かったりしてもよいと言っているわけではありません。


筆者の見解
ヘイト・スピーチやネガティヴ・キャンペーンという言葉を聞いたことがないでしょうか。ネットを眺めていて、一件正当な批判のようだが、そのじつやたらと相手の悪いところだけを強調しているのを一度くらいは見掛けたことがあると思います。いや何もネットに限らず、新聞、書店売りの書籍や漫画雑誌でもそういうことは可能です。

「“好色”をことさら強調!」では誰にでも当て嵌まるレベルの欠点をその人の固有の問題であるかのように言う論法を紹介しましたが、これと今回の「悪口コレクション」と組み合わせるだけでも、簡単にヘイト・スピーチが可能です。

「事実を述べているのだから問題がない」と反論する人もいるでしょうが、それは違うのではないでしょうか。ある人物についてその悪い点だけを並べ立てることで、その人物への単なる人格攻撃になってしまう。そこが問題なのです。

そもそもある問題点についての正当な批判なら、その問題のみに論点を絞るべきです(例題なら酒癖が悪いなど)。逆にその人物の全体像についての議論ならば、いい点も悪い点も公平に並べるべきでしょう。

なのにその人物の悪いところだけをいくつも論うのは、その論う側(この例の場合はYさん)にXさんに対する何らかの負の感情があるから、とは考えられないでしょうか。

これは人物に限らず、政党や民族、企業などの集団でも同じことです。あるいは商品や催事、何でも当て嵌まります。

なおヘイト・スピーチを法規制しようという流れもあるようですが、うっかりすると本当に必要な批判まで規制してしまいかねないため、簡単ではないようです。規制議論はさておき、少なくとも悪口だけをコレクションする言い回しを聞いても真に受けないよう、日ごろから注意した方がよさそうです。

※ヘイト・スピーチの方法としてはこの他に「解釈次第ではどうとでも取れることを悪く言う」方法があります。これについては後日。


演習
あなたの性格について、いい点と悪い点をそれぞれ5つ以上挙げてください(無理にでも)。




※その後、こちらを。 
ではいい点は伏せて、悪い点だけを考えてみてください。誰かがその悪い点“だけ”を人に言いふらしたとして、あなたはそれを正当な批判だと黙認出来るでしょうか。
PR
この記事にコメントする
※実在の個人、集団についてのコメントはご遠慮ください。
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
22  21  20  19  18  17  16  15  14  13  12 
忍者ブログ [PR]