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メディア――そこは最後のフロンティア。

ここはクイズ形式の例題を読み解いてみることで、
ネットやメディアに潜む罠について考えようというサイトです。
初めての方はぜひ「ご挨拶」を。
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例題
「あなたが暴力的だと思う漫画は何か?」というアンケートが行われました(アンケートA)。回答は自由筆記で、複数のタイトルが書けます。「該当作品なし」も回答可です。

上位の結果は以下の通り。

『呪いの街角』→全回答者の18%が回答。
『ヴァイオレンス・ヒーロー』→同12%。
『暗殺拳少女』→同9%。

アンケートの回答者は無作為抽出で、アンケートを行った会社は信用が置ける会社です(つまり作為的な結果の操作はないものとする)。さて、ここで誰かが言います。

「『呪いの街角』はダントツで1位だ。他の作品に比べ、よほど暴力的な内容に違いない」

――そうなのでしょうか?


じつは――
『呪いの街角』の掲載誌は人気雑誌の「週刊少年○○」。現在最も発行部数が多く、200万部を刷っているのでした。一方、『ヴァイオレンス・ヒーロー』や『暗殺拳少女』の掲載誌はその半分程度の売れ行き。さらにはランク外の『メルヘン・ストリート』という漫画、これは全回答者のわずか2%足らずなのですが、掲載誌は弱小誌でたったの5万部しか売れていません。


解説
その作品の存在そのものを知らない人は、その作品が暴力的だとは回答しません。逆に知名度が高いと、それだけで暴力的だと思う人の絶対数は増えます。

同じくらい暴力的な作品が2つあったとして、片方の知名度が40倍ならば「暴力的だ」と回答する人もその分多くなると考えてよいでしょう(正確に40倍かはともかく)。このアンケートAから推測出来るのはあくまで

a・「暴力的であると思っている人の絶対数が多いのはどの漫画か」
※知名度に影響される。

であって、

b・「実際に読んだ人の中で暴力的であると思う人の比率が多いのはどの漫画か」
※知名度に影響されない。

ではありません。なのでこのアンケートは

(I)・「最も暴力的な漫画は何か」

という知名度とは無関係の事柄を推定する目的では無意味です。

一方、この例題のケースで、各作品を知っている人だけに絞って個別にアンケートを行えば(アンケートB)どうなるでしょうか。あらかじめ知っている人だけに聞くのですから、このやり方は知名度に影響されません。知名度が低い『メルヘン・ストリート』の方がずっと「暴力的だと思う人が多い」可能性が大きそうです。

アンケートBは、b・「実際に読んだ人の中で暴力的であると思う人の比率が多いのはどの漫画か」を集計していますから、こちらの方が(I)を知る手掛かりに向いています。


ちょっと待った!
では

(II)・「社会に暴力的な影響を多大に与えている漫画は何か」

を推定する上ではどうでしょうか? これについては逆です。実際に社会に与える影響は知名度が大きいほど大だと考えられますから、むしろアンケートAが意味を持って来ます。そういう意味では、アンケートAは無意味だとも言い切れません。

以下、箇条書きでいくつか。

・そもそもアンケートというのは意識に上ったことを回答するわけで、「全く名前の挙がっていない別の漫画が、知らないうちに社会に多大な悪影響を及ぼしていた」という可能性も否定出来ません。

・掲載誌が少年誌の場合、青年誌より無意識に評価が厳しくなることも考えられます。(少年誌の中の暴力描写の方が、どうしても目立つので)。

・アンケートBは、じつは実行困難です。「この世に存在する全ての漫画について、その漫画を知っている人ごとに個別に集計を行う」というのは、かなり大規模な調査だからです。あらかじめ調査の候補となる漫画をいくつか挙げてその範囲で集計することも出来ますが、「ではその候補を決めるにはどうすればいいのか」「候補に重大な抜けがないと言えるのか」という難題があります。

もう一つ、そもそも「強いて何か一つ挙げろ」という質問形式だと、また別の問題があるのですが、それは次の機会に。


筆者の見解
アンケートAは(II)の調査に向き、アンケートBは(I)の調査に向く。要は「アンケートのやり方が違うと、その適切な解釈の仕方も異なる」のです。それを間違うと、アンケートそのものは正しい手順で行われていても、結果を全く異なった意味で捉えてしまうことになりかねません。

にもかかわらず、アンケートBのような知名度に影響されない調査は実行困難で、アンケートAのような調査ばかりが行われているがために、実際はアンケートAの結果をうっかり(I)の意味で読み取ってしまっている人は多いのではないでしょうか。

少なくとも、アンケートAの結果が必ずしも「暴力的な漫画は何か」に直結しているわけではないことを意識したいものです。

またアンケートをする側も、「そのアンケートで導ける結果が何であるか」をきちんと自覚した上で、アンケート結果を公表して貰えないものだろうかと思う次第です。


演習
1年に何度かはこの手のアンケートの結果を目にすることがあるはずです。その時に、そのアンケートがA形式であるか、あるいはBであるか、確認してみてください。それは(ア)と(イ)、どちらを知る上で役に立つ(立たない)でしょうか。

※解答例は割愛。
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例題
Aさんが自分の飼っているトリブルについてネットで調べていたところ、こんな記述を見つけました。

「野生のトリブルは糞をする時、仰向けに寝転がってする」

本当かなあと思ったAさん、念のためにネットで再検索してみました。すると確かに同様の記述が何件か見つかりました。ネットとは言え、いずれもちゃんと署名された記事です。

Aさんは思います。

「政治や株価についてなら情報操作もあり得るが、こんなことで嘘をついても誰も得しないだろう。勘違いにしては同じことを言っている人がたくさんいる。恐らく野生のトリブルは本当に、仰向けに寝転がって糞をするのだろう」

ここではこの情報が、情報操作目的で発信された意図的な嘘ではないものとします。果たしてAさんの考えは妥当でしょうか?


じつは――
そもそも「野生のトリブルは糞をする時、仰向けに寝転がってする」というのは、ある人(Xさん)の見間違いでした。Xさんはけして悪意があったわけではなく、たまたま勘違いしたに過ぎません。

が、Xさんのその勘違いにはちょっとした意外性があって、なおかつそこそこ真実味がありました。そのため、何人かのトリブル愛好家が思わずそれを真に受けて、自分のブログに転載したのです。Aさんが再検索した時にヒットした情報はそうした転載によるものでした。

しかし元をただせばそれらは全て、Xさんのたった一つの間違い情報が元であり、それが広まってしまっただけだったのです。


解説
情報源はただ1つなのに、あちこちで山彦のように反射されて、あたかもたくさんの情報源があるかのように錯覚してしまう。いわばエコー効果です。

情報は実体がありませんから無限にコピーが可能です。たくさん目にする情報だからと言って、それが正しいと思えるのは錯覚です。それらの大半がコピー情報であって、実際の情報元が1つか2つ程度なら、その程度の信頼性しかないわけです。

また、間違った情報が広がるという現象は、悪意の有無にかかわらず起こり得ることです。


ちょっと待った!
「記事には署名があったと書いてあったじゃないか」ですって? 間違い情報の発信者Xさんが署名をしたのは、あくまで自分自身のブログ内の1度切りです。その転載先については、署名したのは各記事の作成者が1度ずつです。

ネットにおいて非常によく転載記事を目にしますが、それら転載記事というものが本質的に「責任の所在が不明瞭なものである」ということを指摘しておきます。


筆者の見解
よく「情報源(ソース)を確認しろ」と言います。これは本来「情報源の示せない情報はデマである可能性が大きい」という意味なのですが、今回のように「実体は同一の情報源なのに、複数の情報源が同じ情報を発していると誤解してしまった」というケースを避ける上でも、やはり「情報源の確認」は情報に触れる際の必須事項なのではないでしょうか。

自動車の運転中は、事故を起こさないよう常に目視やミラーで周囲の確認を行います。ネットを利用している時も、適度に緊張感を持って情報の確認をしたいものです。だらだらネット・サーフは事故の元です。

またあなた自身がブログを持っていて、どうしても転載記事を書きたいのであれば、少なくともソースを示しましょう。情報元への礼儀云々だけでなく、今回のような錯覚を防ぐ意味もあります。


演習
以下の一文について考察してみてください。

Bさんがトリブルの生殖について観察し、結果をブログで発表しました。正しく観察出来たかどうかちょっと自信がなかったのですが、気になって調べたところ、Bさんと同じ観察結果をブログに書いている人がいました。




※解答例はこちら。

言うまでもなく、その観察結果はBさん自身のブログを丸写しで転載しただけかも知れません。であれば、Bさんの観察結果の裏付けにはなりません。山彦は、声を出した本人の耳にも聞こえるのだということを忘れないように。 もちろん、その人も自力で観察して、それでもなお同様の結果になった可能性も考えられます。

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