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メディア――そこは最後のフロンティア。

ここはクイズ形式の例題を読み解いてみることで、
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例題
3年2組の田中君が、給食で余ったプリンをこっそり自分のものにしていたことが学級会で報告されました。鈴木君はこの時、やたらと田中君のことを悪く言いました。

ところが次の日の学級会で、その鈴木君も1人だけこっそり給食で人気のカレーをお代わりしていたことが分かりました。田中君はここぞとばかりに反撃します。

田中君「ほら見ろ、鈴木君だって僕と同じようなことをしていたんじゃないか。鈴木君は悪い奴だ。それに鈴木君がそんなことをしていた以上、誰も僕のことは悪く言えないはずだ」

何かがおかしいようですが…。


ここがおかしい――
田中君は、鈴木君がしたことと自分がしたことは同じようなことだと認めています。なのに鈴木君は悪いと言い、自分は悪くないと言っています。


解説
自分と同じようなことをした相手のことは悪く言いつつ、同時に自分は悪くないと主張する。まさしく一挙両得の論法です。

田中君の主張は以下の2つに分けられ、互いに矛盾しています。

a・「(鈴木君だって同じようなことをしているのだから)鈴木君も悪い」
b・「(鈴木君だって同じようなことをしているのだから)それは別に悪いことではない。だから自分は悪くない」

田中君がa,bのうちどちらか片方を主張することは出来るかも知れません。しかしそのどちらであれ、「鈴木君だって自分(田中君)と同じようなことをしている」ということを前提にしています。鈴木君と田中君のしていることが“同じようなこと”なら、「鈴木君は悪い」「自分は悪くない」という2つの結論を同時に導き出すことは出来ないはずです。

もう一度整理すると、

a→給食の残りを勝手に貰うのは悪いこと。
b→給食の残りを勝手に貰うのは別に悪いことではない。

と、それぞれ別の価値基準を基にしているわけです。ここに矛盾があります。その時々に応じて自分に都合のよい価値基準を選択する、いわゆるダブル・スタンダードなのです。


ちょっと待った!
くどいようですが、あくまで鈴木君と田中君は同罪もしくは両方無罪です。「鈴木君だけがよくて田中君が悪い」という結論も間違いです。

なお今回、田中君は自分のしたことと鈴木君のしたことが“同じようなことである”ことが前提です。しかし場合によっては本当に両者を同じようなことだと言ってしまっていいのか検討する必要もあるでしょう。


筆者の見解
もし鈴木君が何も悪いことをしていなければ、そもそも田中君のやったことが悪いかどうかだけが議論の対象になったはずです。田中君がペナルティを受けることはあっても得をすることはありません。しかし「鈴木君が同じようなことをしていた」という全く別個の問題が絡んでくることで、田中君は「鈴木君は悪い、僕は悪くない」というかなり有利な、けれど間違った主張が出来てしまったわけです。

あなたが鈴木君の立場である場合はもちろんですが、第三者である場合にもこうした論法が用いられないか気をつける必要があります。でないと田中君の“やり得”を許すことになります。ネットのブログなどで、今回述べたような論法を見掛けたことはないでしょうか? 注意してください。

※以下、個人的な経験だとお断りした上で。新聞や雑誌などを注意して読んでいると、この手の二重基準論法を政治家や評論家などがしていることがあるようです。その場合、今回のように2つの主張を同時にすることはさすがにありません。ある日ある事柄に触れる時と、別の日に別の事柄に触れる時で、価値基準を摩り替えるわけです。時間差があるので気付きにくいのが難点です。詳細はまた後日。


演習
以下の一文を読んで、問題点がないか検討してください。

佐藤君「山田君は僕が山田君の漫画を断りもなく3冊も読んだと言うが、山田君は僕の漫画を断りもなく5冊も読んだ。2冊も多いのだから、悪いのは僕ではなく、山田君だ」




※解答例はこちら。
・「佐藤君が山田君の漫画を勝手に3冊も読んだ」
・「山田君が佐藤君の漫画を勝手に5冊も読んだ」

という別個の罪があるだけです。単純に「5冊と3冊では5冊の方が多いのだから、差し引きで山田君は佐藤君の漫画を2冊読んだことになり、佐藤君は無罪放免」などと考えてはいけません。仮に佐藤君と山田君がケンカして、山田君が3ヶ月のケガを、佐藤君が5ヶ月のケガを追ったからと言って、佐藤君が無罪放免になるでしょうか?

またこうした“お互い様”の状況で「どっちがより酷いことをしたか」という議論を始めると、えてして感情論的な水掛け論に陥ります。こうした議論を始める人のペースに乗せられてしまわないよう、十分注意しましょう。
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